※注意
本記事は、漫画『鬼滅の刃』最終話までのネタバレを含みます。
本編未読&アニメ勢の方はご注意ください。
野良仕事を終えた手でキーボードを叩く霰です。
さて、今日は以前の記事(↓リンク)で予告した通り勉強回です。
三幕構成 理想の世界を描くために - 霰の制作日誌 (hatenablog.com)
お話を書く上での基本構成の一つ『三幕』を、鬼滅の刃を使って考察していきます。
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良い話を描くために、まずは良い話をよく読むところから。
ヴォオオオ、煉獄さーん!
とか、
伊之助好きー!
とか、一ファンとして叫びたいところはありますが、ここでは一人の書き手として冷静に勉強していきたいと思います。
三幕って何ぞや? という方は、記事冒頭のリンクから過去記事で概要を学んでいただければ。
個人的な分析をもとにしていますので、解釈の違い等あればコメントでご指摘いただければ幸いです。
では、見ていきましょう。
序(冒頭~珠代さんの話を聞くまで)
序は世界観の説明から主人公の目的が提起されるパート。
鬼滅では、炭治朗君の家族が殺され、鬼にされた妹の禰豆子ちゃんを人間に戻す、という目的が示されるのが序になります。
妹を人間に戻すという目的と、それを可能にする手段『鬼を人間に戻す薬』が示されるのが珠代さんとの出会いまで。
物語を三つに分けた時、これが序のパートになるんじゃないかな、と個人的に思います(異論は認める)。
後で話しますがここで気を付けるべきは炭治郎君の目的が妹の救出であること。
ラスボスの無残様は事態の原因となっただけで、この段階では物語を閉じるためのファクターではありません。本人を倒さなくても薬はできますからね。
バトルシーンに目を奪われがちになりますが、彼の目的はあくまで妹の救出で一貫しており、その前に無残様本人が立ちはだかるのは割と後になります。
破(十二鬼月の血の収集開始~鬼を人間に戻す薬、禰豆子への投与まで)
破は、序で示された目的を果たすための障害や課題が現れるパート。
禰豆子ちゃんを人間に戻すには薬が必要という課題が示されます。
その開発のために十二鬼月という強い鬼の血を採取する必要があり、そのために炭治郎君は戦いの日々を送ることになるんですね。
ここで鬼殺隊の面々が目立ってきますが、この物語の主人公はあくまで炭治郎君。
何度も言う通り主観である彼の目的、妹の救出が物語のゴールになります。
なので彼の目的を果たす障害は、あくまで薬の完成までのもの。
薬が禰豆子ちゃんに投与された時点で彼の課題は終わっており、本来は急である薬の効果発揮を待つだけとなります。
ですがここで、ようやくラスボスが出張ってきます。
禰豆子ちゃんが求める鬼となったことで、無残様は彼女を食い殺すことを目的とするようになります。
勿論、食べられてしまえば救出もなりません。
禰豆子ちゃんを守りたい炭治郎君と、食い殺したい無残様。
ここではじめて、主人公とラスボスの間に物語的な敵対関係が発生し、最後に激突することになるのです。
急(決戦~完結まで)
急は、序で示された目的が達成されたかの答えが出るパート。
つまり、破で立ちはだかった障害を主人公が超えられたかどうかの結果発表になります。
ここまでの流れで物語の主人公、つまり炭治郎君が超えるべき課題は二つ。
一つは禰豆子ちゃんが人間に戻れるかどうか。つまり薬が効果を発揮するかどうか。
もう一つは禰豆子ちゃんを狙う無残様を倒せるかどうか。
この二つを超えて初めて妹の救出という問題が解決することになり、物語は大団円に向かうのです。
まとめ
いざやってみると、とても分析しやすいお話でした。
やっぱり良作は綺麗にセクター分けされてますね。
その中でも破の後半、炭治郎君と無残様の衝突が見事だと思います。実は二人ともお互いを意識していないまま敵対したのがまた秀逸ですね。
まぁそこに至るまでの無残様の無能っぷりは方々で騒がれていますが……。
目的が一貫した作品は、登場人物の動機がぶれないので読者が混乱しにくいです。
他にもワンピースとかポケモンなんかは一応は一貫した目的がありますが、あれは定義が曖昧ですからね……。
鬼滅はその辺り、目的が家族の救出という飲み込みやすいテーマだったことも評価点だと思います。
今回の最たる学びは、物語には明確なテーマを設ける事、ですかね。
こうして解析したことを肥やしに、作品作りに生かしていきたいと思います。
読み手の方にとっても、作品を見る上での新しい基準になれば幸いです。
こうして学び続ければ、いつかは自分も神作品を作れるはず……。
その日が来ると信じて、今日も明日も修行の日々。
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