脚本から物語を描く 理想の世界を描くために6
休みの日は四六時中、文章に触れる霰です。
今回の『描く』は前回↓の予告通りドラクエをやっていて思い出した師の教えの記憶、第二弾です。
マジックアイテム 理想の世界を描くために5 - 霰の制作日誌 (hatenablog.com)
私の師匠はラノベではなく文学の作家であり、脚本・台本も書いていたのですが、教わっている時に一度だけ映画の台本を見せてもらったことがあります。
脚本は映像作品を作る時に監督が読む設計図のようなもので、私たち物書きが読めばそれはそのままプロット(小説の設計図)になります。
そこで、ちょっとうろ覚えの記憶を活かして、ゲーム内のサブイベントの一部を脚本として描きなおしてみようと思います。
というわけでいざ本題。
今回もささめちゃんに活躍してもらいましょう。
今回の舞台は以前の海水浴同様、ウェナ諸島という地方。
恋多き魚人の種族ウェディが統治する地域であり、むらさめくんの故郷でもあります。
そんな島々の一つの、とある町でのこと。
ささめちゃんは通りすがりに、町人のマリーブという女性に声を掛けられます(ゲームではこちらから声を掛けますが、ここではそういうことにしておいてください)。
彼女はボトルメールで届いたラブレターにメロメロであり、顔も見たことがない送り主にぞっこん惚れています。
ささめちゃんは返事を書きたいという彼女のため、恋を叶えるという特別な羽ペンを作るべく、
ペンギンをいじめて羽を毟り取ります。
まぁ、コメディです。
落ちについては是非プレイして確かめてほしい所ですが、ひとまずここまでの流れを脚本風にすると以下の感じでしょうか。
〇南の島の町。薄曇り(昼)
潮騒を聞きながらささめ、砂浜を歩いている。
しゃがみこんでいたマリーブ、ささめに気付き振り返って声を掛ける。
マリーブ「もし、お強そうな旅のお方。聞いてくださいまし」
ささめ「はい?」
ささめ、立ち止まり振り返る。
マリーブ、勝手に話し出す。
マリーブ「先日、海岸で紙切れの入った小ビンが流れ着いているのを見つけたのです」
ささめ「はぁ」
マリーブ「小ビンの蓋に『かわいいコ、読んで♡』と書いてあったので、つい開けてみたところ……」
ささめ(独白)「開けたんだ……」
ささめ、呆れる。
マリーブ、気にせず話す。
マリーブ「なんと、中には銀色の長い髪をうしろにたばねた美しい殿方の写真と、心揺さぶる素敵な愛の詩が入っていたのです。それ以来、寝ても覚めても(以下略)」
ささめ、引く。
マリーブ、うっとりとする。
マリーブ「ああ。小ビンのお方に私の想いを伝えたい! そこでご相談なのですが、幸せのはねという希少な品で作ったペンで手紙をしたためれば恋がかなうというウワサがあるのです」
ささめ「えぇ……」
ささめ、眉を顰める。
……と、ペンギンさんを狩りに行くまでの経緯を纏めるとこんな感じです。
ドラクエの主人公は喋らないのでささめちゃんの反応は霰のオリジナルですが、脚本としてこのイベントを書くとこんな風になるのだと思います。
シチュエーションとアクションは小説だと文章で示すところですが、脚本ではこれら二つを『柱』と『ト書き』と言います。
柱は場面毎の状況、ト書きが人物の挙動ですね。
シチュエーションを示した後はセリフとアクションの繰り返しですが、これだけでも十分物語は成立します。
要するに簡略化した小説なので、柱とト書きを膨らませてあげれば立派な文章になります。
例えば 柱の『南の島』『薄曇り』『昼』部分のだけでも、温暖な場所、昼だけど今は日差しはない、過ごしやすい時期、みたいな表現ができますね。
頭の中にお話の中の情景が浮かぶ、でも上手く文にできない、みたいな書き手の方は、脚本方式でまず第一稿を書いてみると良いのかも。
私も頭に浮かんだ情景を文字に書き写すタイプなので、折角思い出したことだし活用していこうと思います。
あと、声優や役者志望の方はト書きのところを声の調子や身振り手振り、表情で表現することになるので、覚えておくと役に立つかもしれません。
こうしてかつてを振り返る日々が明日の役に立つと信じて。
作品はこちら
Ⅲ勇者クロニクル ~第Ⅰの勇者『黒騎士』~ (syosetu.com)