夕飯に悩む霰です。
豚肉とマッシュルームってどう組み合わせればいいんだ……と、冷蔵庫の食材の食べ合わせに苦労しているのですが、豚とキノコと言えばトリュフの話が有名ですね。
フランスでは豚の嗅覚を頼って地中奥深くからトリュフを見つけ出すのですが、猟犬なり馬なり、人間は昔から動物の力を借りて生活してきました。
今日はそんな、人外の生き物たちとの共存を描いた物語の紹介です。
獣の奏者
獣の奏者 I闘蛇編 (講談社文庫) | 上橋菜穂子 | 日本の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon
本ブログでは散々紹介している、上橋菜穂子先生のファンタジー小説。
以前Twitterかブログ内で購入報告をしましたが、時間ができたのでやっと一巻を読了です。
……と思った次の瞬間二巻の半分くらいまで読んでました。恐ろしい。
とまぁ、そんな感じで面白いのですが、内容としては主人公のエリンが『王獣』と『闘蛇』という生き物を巡って世界の謎に迫っていくお話。
それぞれ彼女が住む国の王と、軍事を司る勢力の象徴である二つの生き物を巡って物語は展開します。
特に王獣については、その生態と人間の都合の矛盾にスポットが当てられていますね。
王権の象徴である王獣は人間側の色んな儀式や決まり事に引き合わせられるのですが、それによって生態に影響をきたして様々な問題を抱えています。
エリンちゃんはリランという王獣の仔と出会い、その生態への理解と共に自国の歪みに触れていくのです。
私の作品、Ⅲクロでも表現に努めていますが、人間の常識や想いは人間にしか通用しないというのをよく表した小説だと思います。
この物語の中では、色んな人が自分の世界の外側から来た存在に触れ、そして衝撃を受けるシーンがかなり多いです。
とある女性が自分が絶対の権力や神性に守られている……と思っていたら、蓋を開けてみたらそれは全てデタラメだったと思い知らされるシーンがあるのですが、個人的にはそれが特に印象的でしたね。
彼女は自分の目の前の世界しか知らずに育ち、だからこそその外側から来た真実や現実に向き合った瞬間に強烈なショックを受けるのですが、読んでいてこっちもしびれましたね。
私たちは一生懸命身に馴染んだ常識やら社会やらを守ろうとしますが、これはそれらの常識が通用しなくなった時の絶望感や頼りなさを人間と獣の違いになぞらえて伝えてくる物語です。
私にとっては、ある種Ⅲクロに思う完成形と近しいものを感じる作品でした。
あれも人間の理外の世界を知った子供たちが大人たちにその事を知らせて、それによって社会に様々な波風を立てる話ですからね。
獣の奏者では王獣や闘蛇の力によって、Ⅲクロでは勇者たちの剛力によって、犠牲と忖度で生かされていたものは崩落させられていきます。
ちょっと読んだだけでも自分が書きたいものの欠片が見えて、個人的にはとても参考になる本ですね。
とりあえず主人公を通じて夢や願望を叶えてくれるライトノベルとは全くもって違う、ファンタジーの中に現実の人間をまざまざと見せてくれる物語です。
とっつきやすい話とは言いにくいですが、この深み、そして没入感こそ私が求めるところ。
書き手にも読み手にも大いなる学びをもたらしてくれる神作品です。
是非お試しを!
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Ⅲ勇者クロニクル ~第Ⅰの勇者『黒騎士』~ (syosetu.com)
歩く塔のアン (syosetu.com)※お休み中
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