再び禁酒に入った霰です。
咳の発作は多少マシになってきましたが、お医者曰く薬で完治しないのはおかしいとの事。
そんなわけで再び薬が強化され、ついでに副作用も強化されたため、眠気で脱落する前に大慌てでブログを書き始めるのです。
で、今回は本の紹介。
読破自体は結構前にしていたのですが、レビュー記事を忘れていた一冊です。
では本題。
烏に単は似合わない
烏に単は似合わない 八咫烏シリーズ 1 (文春文庫) | 阿部 智里 |本 | 通販 | Amazon
2014年出版の阿部 智里(あべちさと)先生のデビュー作となるファンタジー小説。
現実世界と一切接点のないハイファンタジーですが、お話の硬派さの割にライトノベルって分類らしいですね。
ライトノベルの定義は曖昧ですが、私は中高生向けの娯楽小説というイメージを勝手に持っています。
ただこれはちょっと年齢高めにおススメというか……何はともかく内容のご紹介。
舞台は『八咫烏の一族』という、鳥と人の姿を行き来できる人たちが支配する世界『山内』。
ここでは、東西南北にそれぞれ有力な貴族の家があり、それらを『宗家』と呼ばれる八咫烏の当主が治めています。
その内の一つ『東家』の二女である『二の姫』ちゃんは、病気の姉に代わって入内し次の当主の妻『桜の君』を決める行事に参加することに。
大貴族の娘でありながら名前が無かった彼女はそこで『あせび』という名前をもらい、他の三家の姫たちと交流を重ねていきます。
しかし、男子禁制である筈の後宮にはひっきりなしに男の兵士や刺客が現れ、華やかさの影に不穏な空気が漂います。
そのくせ、次期当主の『若宮』様はお目見えの日が来ても一向に現れず、とある事件をきっかけに事態は更なる混迷を極めていくのです。
……と、ネタバレを省いてあらすじを書くとこんな感じでしょうか。
まぁ、要するに宮中恋愛ものっぽいテイストのミステリー? 小説ですね。
以前も一度軽い感想を書きましたが、個人的には冒頭の入内のシーンが好きですね。
最初は普通の平安貴族っぽいお屋敷の日常風景から始まり、クラシックな宮中恋愛の雰囲気を出すのですが、そこに大烏が引く『飛車』という乗り物が現れた辺りで「あぁ、これはファンタジーなんだ」って実感を読者に与えます。
そこから章ごとに四季の自然の美しさ、その中に佇む宗家のお屋敷の華麗さ、そして四人の姫の美貌を描写し、見事に作品世界に引き込んでくれる感じがしますね。
と、ここまで書くと綺麗な雰囲気なのですが、女の園のお話ということで絵面の良さの割にはまぁ……陰鬱な展開も多いです。
そういった意味でもこのジャンル『らしい』本でありますが、更なる特徴は恋愛よりミステリー色が強い所ですかね。
あせびちゃんの周りではいくつもの事件が起こりますが、その真相は中々明らかになりません。読みながら結構じりじりモヤモヤさせられます。
その分真相が丸ごと明らかになる瞬間は色々とショッキングで目が覚めるよう。
余りに謎が多く、そして真相解明も急激なため、一読で全部理解するのは難しいかもしれません。
小説家になろうから本を読み始めた方には少しハードル高めな気がしますが、ライトノベルから純文学に興味が移った人の入門用にはおあつらえ向きだと思います。
控えめに言っても好みが分かれる作品だと思いますが、読書体験に新しい幅を持たせてくれる事は請け合い。
それを体験して良かったと思うかは読者次第ですが、少なくとも書き手を志す者としては大いに勉強になりました。
ちょっと手強い女の長期戦を覗く勇気があったなら、ぜひお試しを!
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