指の使い過ぎで手が痛い霰です。
年がら年中、時間が空けば書くor読むで文章に触れていますが、好みの傾向がはっきりしていると読みもののジャンルも固定化しますね。良いのか悪いのか……。
というわけで、今回の読書はこちら。
ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫) | 宮部 みゆき |本 | 通販 | Amazon
劇場版で有名なこの本ですが、内容は結構違います。
まぁ、一本分に収めるには長い物語ですからね……。
この物語は、小学生のワタルが同級生のミツルの導きで異世界に渡って冒険します。
そしてその地にいる『運命の女神』と出会い、彼女の力で両親の離婚を期に失われた家族の絆を取り戻そうとする話です。
失われた家族。
そう、以前テーマに挙げた『欠落と回復』↓その欠落部分ですね。
欠落と回復 理想の世界を描くために3 - 霰の制作日誌 (hatenablog.com)
骨子となるこの要素や登場キャラクターは劇場版と共通ですが、小説版では普通の子供としてのワタルの日常や、彼の親族についての詳細がきちんと描写されています。
ただ結論から言うとこの話、欠落によって失われたものが戻ってこないんですよね。
無くしたものを取り戻すというより、無くしたままでも強く生きていけるようにワタル君が成長していく、という話です。
ちょっと全年齢用の映画にするにはエグい人間関係や勢力同士のいざこざに巻き込まれ、それによって父の心変わりを許さないまでも理解はできる、ワタル君はそんな人間になっていきます。
そんな人格、精神面の描写もそうですが、世界観についての掘り下げも小説版なら深くなされるので、劇場版で説明不足になっていたところの補完として読むのも良いですね。
劇場放映当時に小学生だった人が今原作を読むと、思い出補正もかかってワタル君の感情の機敏が感慨深いかもしれません。
展開や結末の違いも含め、改めて映画を見ながら楽しむのもいいでしょう。
最後に(何故か劇場版でカットされた)名台詞を。
ヴェスナ・エスタ・ホリシア
再び会いまみえる時まで。
ヒトの子の生に限りはあれど、命は永遠なり。
最初の言葉の意味が『再び会いまみえる時まで』。
私も長い時間の後に再びこの作品と出会い、学びとしました。
あの日の小学生は、果たして今……。
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